諺の中でもお天気に関するものが多くあります。
意味を調べてみると、今の天気、少し先の天気がある程度予想できるものもいっぱいありますね。
最近ではあまり空を見上げなくなりましたが、ふと諺を思い出すような空模様を目にすることもあります。
たまには空を見上げて自分で予想してみるのもいいかもしれません。
お天気のことわざ ― 観天望気(かんてんぼうき)とは、
自然現象や生物の行動の様子などから天気を予想すること、その元となる条件と結論を述べた天気のことわざのような伝承を観天望気といいます。
古来から山や海での仕事に携わる人々が、経験的に体得し使ってきました。
そんなお天気に関する諺のことを調べてみました。
晴れ?雨?
・夕焼けは晴れ、朝焼けは雨
夕焼けが見えるのは西の空に雲がないということになるため、翌日は晴れることが多いようです。
物語文では夕焼けの赤やオレンジに特別な意味を持たせることも多く、血のような赤と表現して傷ついた心を表したり、「斜陽」という言葉にもあるように感傷的なシーンにも使われたりします。
夕焼けと朝焼けで対になっているのがおもしろいです。
学生なら朝練や新聞配達のアルバイトなど、一生懸命何かに打ち込む姿とともに使われるかもしれませんね。
とはいえ朝焼けは夕焼けほど物語には登場しないようです。
天気は西から東へと移っていくため、天気のよい状態はすでに東に移っています。
日の出の時、東の空に朝焼けがおこると、まもなく西から雲が近づいていると考えられるので雨になりやすい。
ということのようです。
・煙が東に流れると晴れ、西に流れると雨
けむりが東になびくということは、風が西からふいているということです。高気圧が近づいているということで、晴れやすく「天気は西から東への方向で変動する」、という原則が関係していると考えられます。
高気圧と低気圧が近くにある場所では、高気圧の方から低気圧の方へ向けて風が吹きます。
すなわち、煙が東に流れるときには西側から風が吹いており、西に流れるときには東側から風が吹いているということです。
西側から風が吹く場合、観測地点よりも西の方向に高気圧があり、やがてそれがやってくるために今後は晴れるということなんですね。
・朝にじは雨、夕にじは晴れ
虹は、太陽と逆の方向に雨が降っている場合に空に現れます。
朝は太陽が東にあるので、朝に西の方向に虹をみるということは、西側に雨雲があるということで、西の空に雨つぶが浮いてるということになります。
天気は西から東へと移っていくため、西の空に浮いている雨つぶが自分の所に近づいてくるから雨になるとなるわけです。虹が出たらつまり、雨雲は近々、虹を発見した人のいる場所へと移動してくるとなるんですね。
ただ、朝に虹があらわれているときには、すでに自分のところでも小雨がふりだしていることが多いです。
雨上がりの空に虹がかかることがありますが、「朝虹は雨 夕虹は晴れ」のことわざは、虹が見えるのが朝なのか夕方なのかで、その後の天気が異なるということを表しています。
これも天気が西から東へ移り変わることと関連づけると、科学的な気象条件と一致します。
夕方の太陽は西に沈むので、虹が出たら東側に雨雲があるということです。
虹を観測した地点から去った後の雨雲なので、翌日は晴れになるのです。
・飛行機雲が消えないで広がると雨、消える場合は晴れ
飛行機雲も小さな水滴の集まりで、雲の一種です。
ただし水滴は少量なので、上空がカラッと乾いていれば、すぐに蒸発して消えてしまいます。
その逆で、飛行機雲がなかなか消えないのは、上空が湿っているという証拠。
飛行機から噴き出す空気(排気ガス)は暖かいので、上空の高い所で急に冷やされると、雲ができることがあります。上空の空気が乾いていれば、すぐに雲は消えてしまいますが、湿っていればいつまでも残っています。
つまり、飛行機雲が長く残るときは、天気が下り坂になる前ぶれと考えられるのです。
・ツバメが高く飛ぶと晴れ、低く飛ぶと雨
雨の前は空気中の水分が多くなり、ツバメのエサとなる虫が低いところを飛びます。
そのエサを取るためにツバメも低く飛びます。
虫たちが雨を察知して葉の下などに身を隠すという説もあります。
ヒバリもツバメも、晴れると高く飛ぶのですね。
ツバメは春に南方からやってくる渡り鳥で、飛ぶのが速く、エサの昆虫を捕まえるのが得意です。
雨が近くなって湿度が高くなると、空中を飛び回っている小さな昆虫の羽が重くなって、地上近くを飛ぶようになります。
すると、それを追ってツバメも地上近くに降りてきます。
雨!
・物の響き(汽車・鐘・川瀬等)がよく聞こえると雨
音はふつう放射線状に広がっていくため、遠くになると聞こえにくくなります。
でも、雨の原因となる暖かい空気が広がっていると、その音が地上にはね返ってくるため、遠くの音が聞こえやすくなります。
上空にあたたかい空気があるときは、前線があるため、雨が降りやすくなるということですね。
遠くの電車の音などが、とてもよく聞こえる事がありますがこれは音の屈折によるものです。
音は、気温の高い方から低い方へと屈折して伝わる性質を持っています。
晴れの日は地表に近いほど気温が高く、上空ほど気温は低くなっていくため、地表付近の音は上空に向かって曲げられ、遠くまで伝わりにくいのです。
一方、低気圧が近づいて雲の上の方に暖かい空気がやってくると、上空に向かった音が地表に戻ってくることがあり、普段は聞こえない遠くの音が聞こえるというわけです。
・遠い山が近くに見えると雨
空気中の水分が多くなると、風があまり吹かず、ちりもまい上がらない上に、光の屈折率も小さいため、遠くまで見えるようになります。
空気中に水分が多いため、雨が降りやすくなるんですね。
・波のような雲が現れると雨 (波雲は雨)
波雲(なみぐも)は、前線や低気圧)などが近づいたときにあらわれやすい雲です。
この雲が近づいたということは、前線や低気圧が近づいているため、雨になりやすいということです。
・月(太陽)に傘がかかると雨
太陽や月にうす雲(かさ)がかかっていると、時間がたつにつれて、前線や低気圧の雲がどんどん移動してきて雨が降りやすくなります。
・星がちらちらすると雨
都会では星が瞬く夜空を見ることは難しくなりましたが、田舎ではそう難しいことではありません。
むしろ月明かりと星明かりが夜の暗闇を照らす唯一の灯だったりもします。
ところで、宇宙では星は瞬いて(またたいて)見えたりはしません。
星は常に一定の光量で地球を照らしているだけです。
星が瞬くのは地球上から宇宙を見上げたときだけです。
星が瞬いて見えるのは星と人の目の間にゴミやホコリが通過したり、温度差のある空気が揺れて光線が曲げられたときだからです。
つまり、蜃気楼や陽炎の原理と同じです。
何らかの理由でわずかな温度差が生じると空気はそれを解消しようと混ざり始めます。
そのときに、光が曲げられてユラユラしたりチラチラして見えるのです。
だから、大気が不安定なときほどユラユラ揺れて見えることになります。
大気が不安定とは、これから曇りや雨になる可能性が高いという事です。
星の光が激しくまたたいているように見える時は、空気の流れが激しくなっている時なのでそんな時は、前線や低気圧が近づいていて、雨になりやすいのです。
・雨ガエルが泣くと雨
雨がえるのひふは、気温のあたたかさと空気中の水分を敏感に感じ取ると考えられます。
そのため、空気中の水分が多くなると、雨ガエルが鳴き始めるため、雨が近いといわれています。
・山にカサ雲かかれば雨
山の上にカサのようにかかる雲を「傘雲」「笠雲」と呼びます。
孤立した山、たとえば富士山などで起こります。
物語というよりは、詩や俳句などで使われる風情ある景色です。
・東風吹けば雨
雨を降らせる低気圧が西から日本に近づいてくると、気圧の高い東から、気圧の低い西へと風が吹いていきます。 これが東風です。東風(こち)は、主に春風を指します。
菅原道真の詠んだ「東風吹かば にほいをこせよ 梅の花 主なしとて 春を忘るな」という和歌も有名です。
・猫が顔を洗うと雨 ・猫が顔を洗う(耳をこする)と雨
「猫が顔を洗うと雨が降る」ということわざは、雨の予兆で湿気が高くなるとヒゲが重くなり、これを整えるために顔を洗う仕草をするようです。
猫が顔を洗うと言っても、もちろん水で洗うわけではありません。
前足で顔まわりを身づくろいします。
動物は湿度や気圧の変化をさまざまな形で感じ取っているのですね。
猫は動物の中でもきれい好きで、毛づくろいを頻繁に行います。
エサを食べた後に口のまわりの食べかすを取り除いたり、ヒゲや顔の毛並みを整えたりする目的で、顔を洗う動作を行います。
顔を洗う仕草と天気の関係は、猫にとってはセンサーの役割があるヒゲにヒントがあるようです。
猫のヒゲは神経が集中する感覚器官です。とても敏感で湿気や空気の変化を感じ取ることができるといわれています。
晴れ!
・朝霧は晴れ
科学的には、朝に霧が発生するということは夜間の天気が良く、地面から出ていく水分が多いという裏付けもあります。
昼になってしまうと霧もなくなっていくため、朝とありますけど多くは早朝を表します。
・夏の入道雲は晴れ
入道雲は夏空を象徴するもくもくと大きな雲です。
実際には雷や夕立が発生することもありますが、晴れのイメージが強いですよね。
物語などの中でも晴れた夏の日を表すときによく使われます。
・ヒバリが高く昇ると晴れ
ヒバリは漢字で書くと「雲雀」で、春を告げる鳥としても知られています。
ピ~ピロピロと甲高い声の鳴き声や空へ高く舞い上がり滑空する動きが特徴的な鳥です。
これは「揚げ雲雀」という縄張りを主張する行動だという事です。
ヒバリの舞い上がりは体の大きさの割には上下が激しいため、気象条件に大きく影響されるのかもしれません。
これから天気が悪くなるときは高度の高い所ほどその前兆が現れやすく、例えば低気圧の近くでは湿った空気や強い風などが前もって分かります。
その変化を感じ取り、高い高度でも飛びやすい晴れでは高く舞い上がり、天気が崩れるときは低めに舞い上がるのかもしれません。
その他
・暑さ寒さも彼岸まで
彼岸は春分と秋分(とその前後)を指し、「暑いのは秋分まで、寒いのは春分まで」という意味です。
天気にとどまらず「つらいことにも必ず終わりが来る」という意味でも使われ、物語ではこちらの意味で見ることもあります。
日常生活でよく見聞きすることわざの1つです。
「夏の暑さは秋の彼岸までに、冬の寒さは春の彼岸までに和らぐ」ということを表しています。
彼岸とは、春は春分の日、秋は秋分の日をちょうど中間にした前後3日間、つまりそれぞれ7日間のことです。
現代の体感では、桜が咲いていても肌寒い年や、10月前後まで厳しい暑さが続く年もありますが、彼岸の頃を季節の区切りのめやすとして覚えておくとよいかもしれません。
・渡り鳥は雪多し
渡り鳥が例年より多いのは寒気が強くなっていることを表し、寒い冬や大雪を予想させます。
渡り鳥という言葉は主に越冬のために日本へ来た鳥を指すため、秋の季語としても文に出てきます
・雷鳴れば梅雨明ける
夏は夕立とともに雷が鳴るイメージがありますが、このことわざが指すのは梅雨終わりに鳴る時間を問わない雷です。
雷というちょっとした事件が終われば梅雨が明けて抜けるような空の夏がやってくる。そう考えると、物語の流れとしても使われそうな表現ですよね。
狐の嫁入り
日が照っているのに小雨が降ること。
晴れているのに小雨が降っている天気を指します。いわゆる「天気雨」のことです。狐は人を化かす、狐には人とは違う世界があるといった考えから生まれた言葉で、地方ごとにさまざまな俗話があるようです。
空が晴れているのに雨がパラパラ降ってくることを「狐の嫁入り」と表現することがあります。
日照り雨をなぜ「狐の嫁入り」と呼ぶかには諸説ありますが、滅多に起こらない珍しい気象現象だったため、昔は「理由のわからない怪奇現象」とみなされ「狐に化かされているのでは」「狐の嫁入りの行列を人間に見せないように、雨を降らせているのでは」と考えられていたためという説が有力です。
お天気に関することわざ さいごに
昔はこういった伝承や経験なんかから自分で天気を予測していたんですね。