雛人形の五人囃子。
お内裏様がメインなので、他の雛人形たちは添え物と云われています。
でも、それぞれに意味も役目もあるんですね。
五人囃子は能のお囃子を奏でる楽人ですが、雅楽の楽人というバージョンもあるようです。
かわいらしい五人の楽人たちのこと、並び方や持っているものなどをもう少し詳しく知りたく、まとめてみました。
目 次
五人囃子(ごにんばやし)の役割はなに?
雛段狭しと並ぶ五人。
能のお囃子を奏でる五人の楽人をあらわしています。
れっきとした男性というか少年なんですね。
元服(11~17歳で行う成人の儀式)前の少年たちで、
髪は結ばず少年の髪型になっています。
三角に尖った侍烏帽子(さむらいえぼし)を被っています。
雛人形は、お内裏様の結婚式を表しています。
めでたい席を音楽で盛り上げるのが五人囃子の役目ですね。
五人囃子の囃子とは?
どんな音楽か?というと名前にあるようにお囃子です。
囃子とは、映えるようにする・ひきたてる、という意味の「はやす」から生まれた言葉です。
中心となる音楽や縁起に添える、楽器主体の演奏のことです。
能・狂言・歌舞伎・長唄・寄席演芸など日本のさまざまな芸能において、拍子をとり、または気分を出すために演奏する音楽を指します。
囃子は 日本の伝統文化の能楽の演奏形式のひとつで、
ユネスコ無形文化遺産です。
五人囃子は能の楽人
能は、「シテ方」「ワキ方」「地謡」「囃子方」で構成されます。
「謡」は、シテ方、ワキ方、地謡のセリフを含めて大声で謳われるもの全体のことを指します。
シテ方は主人公、主人公を演じるもののこと
ワキ方は脇役、脇役を演じる者のこと。
地謡は8~10人で構成されるコーラスグループのこと
場面や情景を描写し、物語の進行語る役割です。
囃子方が笛・小鼓・大鼓・太鼓という楽器担当者のことを指します。
五人囃子は能楽を上演する場合の地謡一人と囃子方四名で構成されています。
幕府と能楽と五人囃子(引用)
室町時代、観阿弥は、将軍足利義満の支援を得て、猿楽の芸風に田楽などの歌舞的要素をとりいれて芸術性を高め、さらに音楽面での改革をも行って、能楽を創始、大いに発展させました。
この観阿弥の偉業を受け継いで今日まで伝わる「 能 」の芸術性を確立したのが、息子である世阿弥です。
幼い時から舞台に立っていた美少年の世阿弥は、若干12歳で将軍の寵愛を受けることとなり、その絶大な後援を得て能を一層優美な舞台芸術に高めました。江戸時代になると徳川家康も秀吉と同じく、知行や配当米、扶持などを能役者に与えて能を保護し、地方の有力諸藩も幕府にならって一流の弟子筋の役者を召し抱えたのでした。
こうした幕府お抱えの能役者の中には引き立てを受けて高い地位についたものも少なくありませんでした。
このような背景もあり江戸を中心とした関東では雛壇に五人囃子や、さらには能楽の演目『鶴亀』『高砂』などの人形も飾られ人気を博しました。
もの心つき始めたころから励んできた稽古の成果を発揮する場でもあるのですね。
五人囃子の並び順
並び方は、向かって左から
太鼓(たいこ)、大鼓(おおつづみ)、小鼓(こつづみ)、笛と並び、
そして扇を持つ謡い手が右端にきます。
右から楽器が小さい順番に並びます。
能囃子の代わりに「五人雅楽」の楽人の場合もあり、
向かって右から、羯鼓(かっこ―鼓)、楽太鼓、笙(笛)(しょう)、篳篥(ひちりき-縦笛)、横笛の順に並べます。
公家中心の京都では雅楽に使用する楽器が好まれました。
現在では主に次の七つの楽器が雛壇を飾っています。
雛壇の五人の楽師たち それぞれの楽器
五人囃子の楽器を一人ずつ紹介します。
五人囃子・謡(うたい)
持物 扇
能の声楽部分の謡をうたう重要な役目。
ボーカルですね。
主役といえるシテ役もワキ役もバックコーラスまでを感情をこめて自由に謡います。
ただし、うなるような渋い発声で。
右手に持っているのは扇です。
謡う時にはそれを構えます。休みの時は下ろします。
扇の所作も芸のうちとか。
五人囃子・笛(能管)
持物 笛(ふえ)/能管(のうかん)
竹でできています。
唯一のメロディ楽器ですが、打楽器的なリズムを刻む奏法を主としています。
また管内に細い竹を1本はめ込んであります。
このため「ヒシギ」と呼ばれる鋭い最高音を出すことができます。
五人囃子・小鼓(こつづみ)
持物 小鼓(こつづみ)
鼓は、桜の胴に、表裏2枚の馬の革を置き、「調緒(しらべお)」という
麻紐で締めあげた楽器です。
右肩にかついで右手で打ちます。
左手で調調緒をもち、しぼり方、革を打つ位置、打ち方の強弱で音階を出すことが出来ます。
打楽器でありながら能でチ、タ、プ、ポ、という名前がつけられている4種類の音を打ち分けることができます。
難しそうですね~。
演奏中にはつねに適度な湿気が必要で、革に息をかけたり、裏革に張ってある紙を唾でぬらしたりして調節するそうです。
鼓は一瞬を貫く音が魅力です
五人囃子・大鼓(おおつづみ)
持ち物 大鼓(おおつづみ)
小鼓より全体的にひとまわり大きいつづみ。
材質や構造はほぼ小鼓と同じ。
左手で持って左膝に置き、右手を横に差し出して強く打ちこむ。
小鼓と違い調緒(しらべお)の調節をしないため、音色の種類は、右手の打ち方によって分けます。
こちらは右腕を大きく上げて強く打つ音(チョン)、弱く打つ音(ツ)、抑える打ち方(ドン)。
湿気を極度に嫌うので、革は演奏の前に炭火にかざして乾燥させます。
「ヤー」「ハー」という掛け声も特徴。
五人囃子・太鼓(たいこ)
持ち物 太鼓(たいこ)
いわゆる締太鼓のこと、構造は基本的に鼓(つづみ)とかわりません。
革は牛革で、撥の当たる部分に補強用の鹿革を貼ることが多い。
音は響かせない小さな音(ツクツク)と響かせる大きな音(テンテン)の2種で、
四拍子のリズムを主導する役割を担っています。
能楽で太鼓が入る場合は基本的に死者の霊や鬼畜の登場する怪異的な内容の曲のみで、そのほかの場合には笛と大小の鼓のみで演じるそうです。
雛人形の五人囃子 さいごに
ただかわいいなぁと眺めているだけではわからない彼らの物語があったんですね。
雛人形の世界にはいって、その音色をきいてみたいと思いました。
(^^)次は隋臣ですね。
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