最近人が会話していて耳に入ってくることばで気になるものがあります。
それは箸の数え方です。
普通一膳(いちぜん)と言いますが・・
コンビニやスーパーでお弁当などを買うと割り箸をつけてくれます。
その時に「箸は何本いりますか?」と聞かれている人が多いんですね。
誰に教わるでもなく(教わったのかもしれませんが(^^;)
「え、箸って本ではないんじゃ・・」と思うものの、そこでこだわるのもなんだし
(本でもいいのかもしれないという自信のなさからですが)
私がきかれた時には「あ、二人分で」なんて答えていました。
が、気になるので調べてみることにしました。
日本語のものの数え方
ものの数え方は様々あって、ものを数えるのに日本ではいくつも言い方があったりします。
数の後に続く助数詞(数を表す語の後ろに付けてどのような事物の数量であるかを表す語要素)で、それが何に対する数なのかが解るようになっています。
日常で耳にすることで、どっちが正しいの?と思う事もあります。
数え方辞典というのがあるようです。
辞典は持っていなかったのでネットで箸の数え方を検索してみました。
箸の数え方(読み方)
・一本(いっぽん)
・一膳(いちぜん)
・一揃い(ひとそろい)
・一組(ひとくみ)
・一具(いちぐ)
どうやら本といっても良いようですが、解説によると箸2本で「一膳」「一揃い」と数えるとありました。
この解説でいくと本でも間違いではないが会話で「何本いりますか?」ときたら二人分なら「4本ください」となるんですけど(^^; これは違いました。
ただし、割り箸は「膳」で数えるけど、未使用のものは「本」でも数えるとありました。
本でもよかったんですね。
数え方の一揃い(ひとそろい)・一組(ひとくみ)・一具(いちぐ)というのは、火箸とか菜箸など、食用ではないものの時に2本でこういった読み方をするとあります。
箸の数え方はなぜ「膳」になったの?
箸はなぜ「膳」と数えるようになったのでしょう?
それはいつから? そんなことも気になりました。
中国では「双(そう)」「対(つい)」「副(ふく)」が箸をセットで数える時に使われていたとあります。
箸に限定されていたわけではなくまとまりを表す表現ということ。
日本では、最初中国風に「双」で数えていたようです。
平安時代末期から鎌倉時代にかけて箸を「前」で数えるようになりました。
そして十三世紀半ばからは、ほぼ「前」に固定しました。
「前」は、日本独自の助数詞です。
元々は神の御座所を「前」と呼んでいました。
それが次第に神そのものを指すようになり、やがて神を「前」で数えるようになりました。
「前」は神社に祀られる主神以外の神様、つまり副たる諸神を数える際に使われていたそうです。
そこから転用して、仏前に供える食饌(しょくせん)の数を数えるのに用いるようになりました。
これは天皇、のちには高貴な人を指すことばの「御前」という使われ方をするようにもなったんですね。
それが転じて、仏像を安置する台、仏具、神に供える食饌についても「前」が使われ、神事に使われる箸についても同様に「前」で数えられるようになったということです。
ここから次第に人が使う箸についても前を使うのが一般的になったようです。
箸を「前」で数えるのは、こんな流れがあったんですね。
箸の数え方の「前」が「膳」に変わったのは?
十六世紀半ばになると、箸は「~膳」でかぞえられるようになります。
これは、箸が膳部に添えられることから、「膳」への連想が働いたことや「前」と「膳」の日本漢字音が、共に「ゼン」という要因が考えられます。
日本の料理には禅僧道元の思想の影響下で形成された「精進料理」があります。
「精進料理」は飯台と呼ばれる台に飯椀、汁椀、蓋物の食器で構成された質素なもので、僧侶たちの間で広まりました。
その精進料理の影響を受けつつ、平安貴族の式正料理を受け継ぎ、鎌倉時代から室町時代にかけて武士の間で形成されたのが「本膳料理」です。
本膳料理には本膳、二の膳、三の膳があります。
それぞれ膳と呼ばれる脚付きの台に料理が並べられて順次出される饗応料理です。
これが茶の湯の発展とともに形成されたのが「懐石料理」です。
この懐石料理のスタイルが一般的に広まっていきました。
つまり一人一つずつの食膳に食器と箸が並ぶものです。
この
日本独自の食膳を中心とした料理形式の登場にあわせて、箸も膳で数えられるようになった
ということです。
(高橋久子論文参照)
♪ 箸は膳で数えるのがいわゆる「正しい日本語」ですが、現代ではむしろ「本」「組」など、二本セットを意味する一般的な数詞で数えることも多くなってきているようです。
これは、箸の変遷を辿ると、むしろ自然な流れのようです。
明治維新による近代化を契機に、西欧料理を始め、あらゆる国・地域の料理が日本に入ってきました。
そして「日本料理」はさまざまな要素を取り入れて多様化しました。
食事を食膳に並べて出されることは日本料理店や旅館等以外ではほぼ無くなってきたと言ってもよいですね。
食の多様化によって、食膳という日本独特のお箸と料理の関係からお箸が自由になったともいえます。
膳が有っても無くても、食事をとるためにお箸は使います。
そして、お箸の数え方も、自由になったと言えます。
古代中国・あるいは日本伝来直後に戻りつつあるということでしょうか。
数え方として箸に特化しないでセットとしての数え方で数えるという形です。
正しい正しくないではなく、日本の食事が多様化し、お箸が自由になったことで、
お箸の数え方も、より身近で一般的な使い方へと変化してきたということですね。
お箸の数え方 さいごに
お箸の数え方は「膳」と思っていたのは間違いではないけれど、
現代では割り箸は「本」でも間違いではないということでした。
いろいろなものが時代の流れの中で変わっていきます。
数え方などのことばでもいえるわけです。
流れの中での変化も受け入れ対応することも必要なようです。
お弁当を買った時に「本でなくて箸は一膳と数えるんですよ」なんて、
余計なことを言わなくてよかったと(^^;)胸をなでおろしています。
箸の数え方の謎?がわかったところで箸がいつから使われているのか、歴史や起源もきになります。 そう思ったら、こちらの記事もご覧くださいね(^o^)
箸の歴史と起源 お箸が日本で当たり前に使われるようになったのは?
他にも箸に関する記事を集めました。
他の記事もご覧いただけたらと思います(^^)